第321章 一緒に映画を見たことになる

林知恵は映画のチケットを見ていたとき、突然ヒロインが悲鳴を上げ、彼女は驚いて手が震え、スマホを落としてしまった。

瞬時に画面が消えた。

しかも、隣の人の足元に落ちてしまった。

林知恵は声を低くして謝った。「すみません、少し足をどけていただけますか？スマホを落としたので、すぐ拾いますから。」

相手は何も言わなかったが、長い脚を少し窮屈そうに横にずらした。

林知恵も時間を無駄にするわけにはいかず、急いでしゃがんでスマホを探した。

しかし、映画館の中は真っ暗で、彼女の手は地面を手探りするしかなく、結局相手の足に触れてしまった。

恥ずかしくて顔を上げる勇気もなかった。

突然、相手が足を動かし、体を少し傾けて彼女に近づいて言った。「手伝おうか？」

その声を聞いて、林知恵は急に顔を上げた。

男の顔は明暗が交錯していたが、その深い瞳は忘れようとしても忘れられないものだった。

宮本深。

「あなた！」

林知恵は反射的に手を上げて目の前の男を押そうとしたが、体は前の列の椅子の背もたれにぶつかった。

前の列の人が振り返って二人を見て、舌打ちした。「ホテル代がないのか？ここで刺激を求めるなんて。」

林知恵はそのとき、自分と宮本深の姿勢があまりにも親密に見えることに気づいた。

彼女は急いで立ち上がったが、今度は後ろの人の視界を遮ってしまった。

「なんで立ち上がるんだ？びっくりしたじゃないか。」

林知恵は一瞬慌てて、宮本深に体を掴まれて席に引き戻された。

彼女は怒って彼を見つめ、小声で言った。「私をつけてたの？」

宮本深は少し顎に手を当て、横を向いて言った。「うん。」

「……」

厚かましい。

よくも平気で認めたものだ。

以前はせめて言い訳の一つもしたのに！

林知恵は言葉に詰まり、もうスマホを探すのもやめて、彼を無視して映画に戻ることにした。

しかし宮本深はそのままの姿勢で、彼女を見続けていた。

それだけでなく、彼の足は常に彼女の方に寄ってきて、彼女は絶えず席を移動するしかなかった。

彼女はついに我慢できなくなった。「足を引っ込めてください。」

宮本深は目を伏せ、低い声で言った。「収まらないんだ。」

林知恵は拳を握りしめた。

目の前の足を押しのけようとした瞬間、宮本深は身をかがめて地面からスマホを拾い上げ、彼女の前で振った。