第320章 某人は十分に残酷

林知恵は病院を出た後、タクシーで桑田財団の支社ビルの前に着いた。

彼女は時間を確認した。桑田剛は午後に会議があると言っていて、約2時間かかるはずだった。

ちょうど良い時間だったが、彼女は5分ほど待ってから彼にメッセージを送った。

「会議終わった?」

「もうすぐ終わるよ、どうしたの?」桑田剛が返信した。

「彼氏のお迎えに来たのよ」

送信後、林知恵は自分とビルの写真を撮って桑田剛に送った。

桑田剛はすぐに返信した。「今行く」

メッセージを見て、林知恵は軽く微笑み、美しい夕日を見上げた。

しばらくすると、桑田剛がビルから出てきた。

「なぜ中で待たなかったの?」彼は手を伸ばして林知恵の手の温度を確かめた。

林知恵が答えようとした時、ビルから多くの人が出てくるのを見て、彼女は反射的に自分の手を引っ込めた。

これが彼女が中で待たなかった理由でもあった。きっと誰かに彼女が誰で、誰を探しているのかと聞かれるだろう。

彼女は何と答えればいいのか分からなかった。

桑田剛は彼女の考えを見抜き、再び彼女の手を取り、他の人々に頷きながら微笑んだ。

「私の彼女だ」

「桑田社長、あなたも恋人自慢するんですね?じゃあ邪魔はしませんよ」

彼らは冗談めかして手を振って去っていった。

林知恵は恥ずかしくなって桑田剛の腕を軽く引っ張った。

「そんなことしなくていいのに」

「恥ずかしいことじゃないだろう」桑田剛は反論した。

林知恵はハッとして、心の中で深く感謝した。

桑田剛は話題を変えて尋ねた。「今日の再検査はどうだった?」

「大丈夫よ、ゆっくり回復していけばいいの」林知恵は重要なことを避けて軽く答え、他人に心配させたくなかった。

「それならいい。これからどこに行きたい?」

林知恵はスマホを取り出した。「映画のチケットを予約したの」

桑田剛は映画のタイトルをちらりと見た。「これを見るの?」

「SFよ。ネットでカップルにぴったりって書いてあったから、評判も調べたのよ」林知恵は自信を持って言った。

桑田剛は考え深げに頷いた。「カップル向けのSF映画か、面白そうだな」

「行こう、まずは食事だ」

林知恵は桑田剛を引っ張って車に乗った。

食事を終えると、映画が始まるまでまだ30分あったので、二人は映画館の下のショッピングモールをぶらぶらした。