第325章 私はあなたを憎むのに十分な時間もない

ザーッ——

林知恵は頭から一バケツの氷水をかけられ、凍えるような冷たさで突然目を覚ました。

驚いて口を開こうとした瞬間、正面から吹きつける川風に全身が震え上がった。

彼女はようやく自分が橋の下にいることに気づいた。

体が崩れ落ちそうになったとき、後ろから誰かに髪をつかまれ、否応なく顔を上げさせられた。

それで彼女は後ろにいる人物の顔をはっきりと見ることができた。

見覚えのある、それでいて見知らぬ顔を見て、林知恵は震撼した。

宮本深のボディガードの一人だった。

彼女は相手の名前さえ知らなかったが、何度も見かけたことがあった。

ボディガードは冷たい目で彼女を見つめ、「申し訳ありません、林さん、仕事ですので」と言った。

林知恵は口と鼻から冷たい風が入り込み、何も言えず、心臓が飛び出しそうな思いだった。