第351章 結婚式を妨害しに行くと思った

ホテル。

宮本深は窓の外の日差しを見つめながら、無意識に指輪があった指を撫でた。

何も触れず、指輪を返したことを思い出した。

田中慎治が水と薬を差し出した。「三男様、そろそろ時間です。」

宮本深は逆光に立ち、無表情で薬を飲み込んだ。深い淵のような黒い瞳が少し細められ、冷たく鋭い。

「行こう。」

ドアを開けると、花が敷き詰められ、ロマンチックな雰囲気の中、ゆっくりとウェディングマーチが流れてきた……

一方。

林知恵と山田さんは山のお寺で精進料理を食べてから下山した。

タクシーに乗るとすぐに、二人は後部座席に疲れ果てて座り込んだ。

5分もしないうちに、山田さんはぐっすりと眠りについた。

林知恵は疲れていたが、全く眠れなかった。姿勢を変えようとした時、ポケットからお守りが座席の下に落ちた。

手を伸ばして少し探ってから拾い上げ、車窓から差し込む日光に照らして確認していると、タクシーがちょうど停車し、隣のウェディングカーと並んだ。

思いがけない99秒の赤信号。

林知恵はウェディングカーのひまわりに目を引かれ、少し顔を上げると、車窓の中のあの黒い瞳と思いがけず出会った。

宮本深。

その瞬間、まるですべてが静止したかのようだった。

言葉もなく、表情もなく、ただ複雑な眼差しが揺れ動き、カウントダウンの時間の中で静けさを取り戻した。

青信号が点灯した。

林知恵は男性の車が去っていくのを見送った。

結婚式が終わると、宮本深と桑田蘭子はプライベートアイランドへ新婚旅行に飛び立つと聞いていた。

そして林知恵は……左折。

もう同じ方向には進まない運命だった。

……

家に戻ると、林知恵は階下で見覚えのある顔を見かけた。

井上希美。

彼女は黒いロングドレスを着て、サングラスをかけ、車のドアに寄りかかって細長い女性用タバコを吸っていた。

初めて会った時と同じように冷たく無関心な表情。

「林知恵、私、行くわ。」

「うん。」林知恵はうなずき、鼻をつく彼女特有の香水の香り。

井上希美はタバコを一服吸って言った。「母は強制的に薬物リハビリ施設に送られたわ。三男様の手配よ。あの老人は今や私たちとの関わりを断ちたがっているんでしょうね。」

「うん。」

林知恵は杖を握りしめ、何を言えばいいのかわからなかった。