第350章 まるで夢のよう

時間がこの瞬間に凍りついたかのように、林知恵はぼんやりと手の中の指輪を見つめ、頭の中は真っ白になった。

男性用の指輪はずっと宮本深の手にはめられていた。彼自身が許可しない限り、桑田蘭子が指輪を外すことはできないはずだ。

だからこれは単に桑田蘭子の警告ではなく、宮本深の意思でもあった。

彼はやはり他の人を選んだのだ。

それは少しも意外なことではなかった。

林知恵は解放された。

しかし彼女の呼吸は途切れ途切れになり、無数の逆棘が心臓に刺さるようで、息ができないほど痛かった。

その様子を見て、桑田剛は表情を重くしながらそのカードを取った。「僕が確かめてくる」

「いいの」林知恵はカードを取り戻し、指輪と一緒に封筒に戻して玄関の引き出しに入れた。「彼女は悪くない」

「知恵……」

「行きましょう、お腹すいた」林知恵は理性的に言った。

「うん」

……

桑田蘭子と宮本深の結婚式は予定通り行われた。

二つの家族の結婚式というよりも、街全体とネット全体のお祭り騒ぎだった。

結婚式の前日の夜には、貸し切りにした二つのホテルは様々な業界の有名人で満室になった。

パパラッチたちは寝る暇もなく、あるスターを撮影したかと思えば、次は別の有名人を撮影し、現場に行かなくても、ネット上ではすでに大賑わいだった。

林知恵は思い切って携帯の電源を切り、本棚から雑誌を一冊取って睡眠を誘おうとした。

数ページめくったところで、彼女はぼんやりとしてしまい、何を考えているのかも分からなくなった。

ピンポーン。

ドアベルが三回鳴って、やっと我に返ってドアを開けに行った。

山田さんはどこからか二本の杖を見つけてきて、一本を林知恵に渡した。

「明日、時間ある?」

「どうしたの?」林知恵は不思議そうに杖を手に取った。

「明日、山に登って日の出を見に行くの」

「え?」

林知恵は驚いて山田さんを見つめ、彼女の顔に冗談の色を探そうとした。

しかし彼女の表情は真剣そのものだった。

山田さんは両手を杖に置いて言った。「行きましょうよ。どうせこの街は十分賑やかだし、私たち二人がいなくても問題ないでしょ」

瞬時に、林知恵は山田さんの意図を理解した。

「いいよ」

翌日の午前2時、街がまだ目覚めていない時間に、林知恵と山田さんは一緒に車で郊外の竹山に向かった。