「井上さん、私はそんなに馬鹿じゃありません。あなたが私の家に来て銃を向けるのは、私を殺すためではなく、本当にデザートを食べに来たというの?」
林知恵はそう言いながら、棚の横の窓を開けた。
井上希美は警戒して言った。「何をしているの?」
「血の匂いがするから、嗅ぎたくないだけよ」林知恵は渋い口調で言った。
その理由については、あの夜の事情を知っている井上希美は確かに分かっているはずだ。
井上希美は唇を噛み、もう何も言わなかった。
林知恵は薬箱を持って井上希美の前に行き、ゆっくりと膝をついて彼女の膝の絆創膏を外した。
白い肌に深く刻まれた傷を見て、一瞬どんな傷なのか分からなかった。
林知恵はあまり質問しなかった。井上希美が答えないことを知っていたからだ。
最初は止血して薬を塗って包帯を巻くだけでいいと思っていたが、林知恵が薬を塗る時、綿棒で非常に細かい破片を拭い出すことになった。
井上希美は痛みで両足が震えていたが、顔は依然として毅然として耐えていた。
林知恵は井上希美の行動を理解できなかったが、彼女のこの怪我が決して自発的なものではないことは明らかだった。
井上希美の足の細い産毛が立っているのを見て、林知恵はそのまま地面に半跪きになり、彼女の傷に息を吹きかけた。
「もう少し我慢して、すぐ終わるから」
「……」
井上希美は瞬時に震えを止め、ただじっと彼女を見つめていた。
包帯を巻き終えると、林知恵は急に立ち上がり、めまいがして目の前が暗くなり、気絶しそうになった。
井上希美は彼女をソファに座らせた。
一瞬で、二人は対立していた状態から、ソファに並んで座る状態に変わった。
井上希美はテーブルの上のデザートを開け、そのうちの一つを林知恵に渡した。
「低血糖?少し食べたら?」
「うん」
林知恵も遠慮せず、デザートを受け取って大きく一口食べた。
井上希美は銃をソファの肘掛けに置き、デザートを手に取って食べ始めた。
彼女が食べていたのは、林知恵が前回彼女のために注文したもので、上には濃厚なイチゴソース、下はふわふわのスポンジケーキ、ちょうど良い甘さだった。
彼女は唇についたイチゴソースを舐め、無表情で言った。「前回が私の初めてのこの種類のケーキだった」
林知恵はめまいが少し良くなり、疑問に思いながら井上希美を見た。