第346章 すみません、選択肢がなかった

「井上さん、私はそんなに馬鹿じゃありません。あなたが私の家に来て銃を向けるのは、私を殺すためではなく、本当にデザートを食べに来たというの?」

林知恵はそう言いながら、棚の横の窓を開けた。

井上希美は警戒して言った。「何をしているの?」

「血の匂いがするから、嗅ぎたくないだけよ」林知恵は渋い口調で言った。

その理由については、あの夜の事情を知っている井上希美は確かに分かっているはずだ。

井上希美は唇を噛み、もう何も言わなかった。

林知恵は薬箱を持って井上希美の前に行き、ゆっくりと膝をついて彼女の膝の絆創膏を外した。

白い肌に深く刻まれた傷を見て、一瞬どんな傷なのか分からなかった。

林知恵はあまり質問しなかった。井上希美が答えないことを知っていたからだ。

最初は止血して薬を塗って包帯を巻くだけでいいと思っていたが、林知恵が薬を塗る時、綿棒で非常に細かい破片を拭い出すことになった。