第362章 君のために生きたい

山下穂子と帰る道で、林知恵はたくさんのことを考えていた。

もしこの子を産むなら、彼女は去らなければならない。

しかし、堂々とした理由で去らなければ、疑いを招くだろう。

ただ、その理由はまだ思いつかなかった。

それに今は山下穂子のことが最も重要だった。

彼女は慰めるように言った。「お母さん、安心して。気をつけるから。でもこのことは秘密にしておいてほしい。叔父さんにも言わないで」

「うん」山下穂子は次第に落ち着き、手を伸ばして林知恵の叩かれた頬に触れた。「まだ痛い?」

「痛くないよ」林知恵は彼女の手を握り、本題に戻った。「お母さん、今は相手が誰かもわからないから、慎重にならないと」

「わかったわ」

山下穂子の表情は非常に真剣だった。

子供を産むと決めてから、林知恵はむしろ落ち着いていた。

帰る前に、彼女は一つのことを思い出した。

「お母さん、城田おばさんのプロジェクト企画書を送るの忘れないでね」

「すぐに送るわ」

「じゃあ先に帰るね」

林知恵は念を押してからタクシーで家に帰った。

アパートの下に着くと、山下穂子からプロジェクト企画書が届いていた。

彼女はこういうことを学んだことがなかったので、企画書を理解できなかった。ネットで大まかに調べるしかなかった。

城田おばさんの企画書はとても標準的に見えた。

もしかして自分が考えすぎなのだろうか?

賭けられないので、桑田剛に送って見てもらうことにした。

エレベーターを出て、送ろうとした時、廊下のセンサーライトが点灯し、一つの影が落ちた。

林知恵が反応する前に、彼女の手は目の前の男性に握られ、まっすぐ部屋へと向かった。

彼女が背中をドアに押し付けられた時、ようやく我に返った。

彼女は怒って言った。「あなた、私の家の鍵を持ってるの?前にドアの前で待っていたのは、全部可哀想なふりだったの?」

男性は明かりをつけず、手を林知恵の頭上に置き、少し身を屈めた。顔は暗闇の中でぼんやりと見えた。

不明瞭な表情だったが、その息遣いには侵略的な感覚が満ちていた。

「ああ」

「……」

林知恵は一瞬言葉に詰まり、小さく「厚かましい」と罵った。

彼女はすでに一度鍵を変えていたのに。

春の夜はすでに徐々に暖かくなっていた。