第375章 私はあなたの体から一つのものが欲しい

林知恵が山下穂子のことを言及すると、彼女は足を止めた。

宮本当主は確かに山下穂子を救う能力があるが、彼も必ず準備をしてきているはずだ。

林知恵は深く息を吸い込み、風の中でゆっくりと振り返った。

「言いたいことがあるなら、はっきり言ってください。回りくどい言い方は必要ありません」

宮本当主は彼女を見て、単刀直入に言った。「お前の体から一つのものが必要だ」

体から?

林知恵は目を伏せて自分を見た。彼女の持ち物は当主の車のエンブレム一つも買えないほど安いものばかりだ。

彼が必要とするものが何なのか、彼女には全く見当がつかなかった。

彼女は唇を引き締めて尋ねた。「何のものですか」

当主の鋭い目が林知恵の体を見渡した。「お前の肝臓の半分だ」

「……」

林知恵はその場に立ち尽くし、一瞬幻聴かと思った。