第376章 私と一晩を

林知恵はぼんやりとした状態で歩き続け、暖房の効いた部屋に入ってようやく我に返った。

宮本深と繋いでいた手を見下ろすと、まるで熱い芋でも触ったかのように、素早く手を引っ込めた。

彼女は冷たい表情で言った。「三男様、そんなことしなくていいです。私は肝臓提供に同意しませんから!」

宮本深は足を止め、無表情で彼女を見つめ、一歩一歩と迫ってきた。

林知恵は後ずさるしかなく、ついに冷たいガラスの壁に背中がついた。

彼は全身濡れていて、シャツが引き締まった筋肉にぴったりと張り付き、どこを見ても力強く抗えない威圧感があった。

「お前の肝臓が欲しい。今、お前はもう病院にいるんだ」

言い終わると、彼は突然林知恵に近づいた。

林知恵はすぐに手を上げて阻止した。「そんなことしないで!」

しかし耳元で「カチッ」という音がした。

部屋中が明るく照らされた。

宮本深は単に電気をつけただけだった。

彼はガラスの壁に手をついて、低い声で言った。「どんなことをしちゃいけないんだ?」

彼は濡れた髪のまま立ち、明るい光の中で林知恵をじっと見つめ、体の周りには光の輪がかかっていた。

息が交錯し、男は彼女の顔を持ち上げた。

林知恵は急に息苦しくなり、内側の唇を強く噛んだ。痛みで初めて理性を取り戻した。

彼女は彼の接近を避け、冷たく言った。「三男様、自重してください」

宮本深は怒らず、深い眼差しで林知恵の顎をつかんで顔を向けさせた。

「他に選択肢があるのか?俺が何を望んでいるか、わかっているはずだ」

林知恵は首を硬直させ、怒りを込めて彼を見た。

「高橋蝶子を連れ去ったのはあなたですね?」

「ああ」

「彼女に大学入試を無事に受けさせると約束したじゃないですか!」林知恵の喉が締め付けられた。

「お前次第だ」

男は見下ろすように林知恵を見つめ、瞳孔が深く沈んでいた。

林知恵は歯ぎしりした。「あなたは最低です!」

彼は動じず、薄い唇を開いた。「一晩俺に付き合えば、お前の母親を救い、高橋蝶子を解放する」

「……」

林知恵は急に彼を見つめ、青ざめた顔に表情はなく、瞳だけが揺れ、絶望と憎しみだけが残っていた。

数秒後、彼女の肩が落ちた。

震える唇で言った。「三男様が約束を守ってくれることを願います」