第401章 くそったれ逃亡中のプリンセス

車内。

桑田剛は徐々に遠ざかる車の影を見つめ、軽くため息をついた。

「やはり一歩遅かったな」

彼の声には惜しむ気持ちはあったが、怒りはなかった。

本当の感情とは結局、相手の幸せを願うものだ。

山田照夫は唇を引き締めて言った。「若様、もう少し頑張ってみませんか？」

「三年以上経っても、知恵が彼を見る目は変わっていない。まだ争う必要があると思うか？私たちの立場から見れば、知恵と三男様は一緒にいるべきではないが、彼らの立場から見れば何が悪いというのだ？」

「でも……」山田照夫はつぶやいた。「林さんは今、三男様と一緒にいられないじゃないですか」

深く考えれば、山田照夫にも各家の複雑に絡み合う利益関係を把握しきれなかった。

まして林知恵にとっては？

彼女は美しいだけの普通の人間だ。

デザインの才能はあるとしても、天才ではなく、財産もなく、権力も持っていない。

業界の人々を手のひらで転がすなど言語道断だ。

身を守れるだけでも運が良いと言える。

彼女の身分では、宮本深と結婚できたとしても、表向きに彼女に敬意を示す人はほとんどいないだろう。

山下穂子がその最良の例だ。

まして裏で彼女を引きずり下ろそうとする人がどれだけいるか。

宮本深がどれほど権力を持っていても、隙間はある。

たとえ小さな隙間でも、林知恵の命を簡単に奪うことができる。

林知恵の性格は競争には向いているが、争奪戦には向いていない。

桑田剛は少し考えて、冷静に言った。「蘭子に連絡して、離婚する時期を見つけるように言ってくれ。我が桑田家は彼女を養えないわけではない。もう十分彼女の好きにさせてきた」

今、桑田剛が最も後悔しているのは、かつて桑田蘭子の頼みを聞き入れ、彼女が宮本深と結婚するのを手助けしたことだった。

山田照夫は心配そうに言った。「お嬢様は今は変わってしまいました。あなたの言うことを聞くとは限りません。彼女は老爺と渡辺社長の言うことしか聞きません。以前、あなたが彼女に海外の研究所で治療を受けるよう勧めたとき、彼女は国内に残って体を養い、子供を産みたいと言い張りました。彼女のあの体では子供を産むどころか、生きているだけでも大変なのに…あ、すみません、若様」