もう一つのこと?
林知恵は困惑して宮本深を見た。「何のこと?」
「君と桑田剛の件は今朝早くに公表されたんだ。彼も知っているはずだ」と宮本深は言った。
「うん、彼は私に聞いてきたけど、答えなかった」
「彼は君が桑田剛の婚約者だと知っていて、私が君と星奈を連れ出したことも知っている。だから、私と君がラブホテルにいることを知っても、彼は不倫現場を押さえに行く勇気はないはずだ」宮本深は指先で森田謙の名前をテーブルの上でトントンと叩いた。「でも彼は上がっただけでなく、強引に入り込んだ」
そう言いながら、彼は携帯を取り出し、ラブホテルのフロントから送られてきたメッセージを開いた。
「お客様、あなたの予想通り、強引に入っていきました」
「強引に?」木村悦子は驚いて言った。「林知恵は彼と関係を確認していないのに、彼は何の立場で強引に入るの?不倫現場を押さえるって?桑田社長とあなたを怒らせることを恐れないの?」
これが宮本深が確認したかったことだろう。
彼が森田謙が上階に行くのを見て興味を失ったのも無理はない。
林知恵は森田謙を3年以上知っているが、彼は決して無謀な人ではない。
むしろ非常に慎重で、話し方や行動は常に礼儀正しい印象を与えていた。
町の多くの人が彼に紹介しようとしたが、彼はいつも丁寧に断っていた。
その後、みんなは林知恵と彼についての冗談を言うようになった。
しかし彼はいつも笑うだけで何も言わず、彼女を困らせるようなことも言わなかった。
林知恵はずっと彼が思いやりがあり教養のある人だと思っていた。
今考えると、彼は自分から行動を起こしたくなかっただけだ。
彼がそんなに慎重なら、どうしてホテルの部屋に強引に入るだろうか?
宮本深の怒りを恐れないのでなければ。
林知恵は森田謙の両親に会ったことがあり、彼らは典型的な小さな町の人々だった。この3年間、彼らを訪ねてくる裕福な親戚も見たことがなかった。
誰が彼の後ろ盾になれるのか?
林知恵は断言できず、顔を上げて宮本深を見た。
宮本深は注意した。「彼のこの件はそう簡単には終わらないだろう。軽率な行動は取らず、彼が次に何をするか見守ろう」
林知恵は事態が複雑になっていることを感じ、「軽率なことはしません」と答えた。
話している間に、彼女の携帯から穏やかな音楽が鳴り始めた。