趙栞は白川若菜が何を話そうとしているのか察したようで、会議室のドアを閉め、彼女の向かいに座った。
「白川お嬢様、何かご用件は?」
「あなたは私たちのスタジオの先輩だから、知恵の以前の能力についてどう思うか聞きたいの。結局、私と彼女は協力する必要があるから、詳しく知っておきたいの」
白川若菜は平淡な口調で、まるで気軽な雑談をするかのようにリラックスしていた。
趙栞は言いかけて止めた。
彼女は本当に林知恵が嫌いだったが、能力に関しては、林知恵は白川若菜に劣らなかった。
しかし、そんなことは口に出せなかった。
ぎこちなく「まあまあです」としか言えなかった。
白川若菜は趙栞の言葉に含みがあることを知っていたが、焦らなかった。
「さっきの会議での彼女の反応は普通だと思う?」
その言葉を聞いて、趙栞は数秒考え、白川若菜の意図を理解した。
「彼女は以前からデザインに関して頭の回転が速かったわ。何を聞いても答えられないような人ではなかったわ」
これは趙栞が意図的に言った言葉だった。
彼女は林知恵に残ってほしくなかった。
もし白川若菜も林知恵を嫌っているなら、林知恵は確実に残れないだろう。
白川若菜は眉をしかめ、少し躊躇うような口調で言った。「趙栞、あなたも今回の宮本財団との協力がスタジオにとってどれほど重要か知っているでしょう。私は知恵の能力が心配で、だから…」
「白川お嬢様、遠慮なくおっしゃってください。私はスタジオで長年働いてきて、スタジオに何かあるのが一番嫌なんです」趙栞は熱心に言った。
白川若菜は微笑んだ。「そんなに深刻な話じゃないわ。ただ彼女を少し見ていてほしいの。彼女が宮本家と親戚関係があるからといって仕事をおろそかにしないか心配なだけよ」
趙栞はうなずき、白川若菜の心配はもっともだと思った。
昼に林知恵が宮本深と出かけた時の得意げな様子といったら。
林知恵のあの薄笑いを思い出しただけで、趙栞はためらうことなくうなずいた。
「白川お嬢様、ご安心ください。私が彼女を見ておきます」
「ありがとう。でもこの件は私たち二人だけの秘密にしましょう。知恵が三男様の前で変なことを言い出さないように」白川若菜は暗に示した。
「はい」
趙栞はこれを聞いて、林知恵をさらに嫌いになった。