聚会を提案したのはルームメイトの来美、直方来美だった。
かつて会社に採用されたものの、お金がなくて、もう少しで実家に帰って嫁に行くところだったルームメイトだ。
前世では、直方来美は半年で帰郷し、毎日夫からDVを受け、子供まで流産してしまった。
実際、彼女自身も不幸な人生を送っていた。
直方来美、来美は、家庭で男尊女卑が非常に強かった。
しかし彼女は長女ではなく、次女だった。
上には3歳年上の兄がいて、下には2歳年下の弟がいた。
家での彼女の立場は想像に難くない。
彼女の話によると、大学に行けたのも他人の援助のおかげだった。
当時、林知恵は直方来美が故郷に帰って同じ轍を踏むことを心配し、会社への手付金を渡した。
幸い林知恵の目に狂いはなく、半年後、彼女はお金を返した。
その後、林知恵も彼女に助けを求めたことがあった。
今では、彼女はファッション業界でもある程度の名声を得ている。
そう考えていると、他の二人のルームメイトもチャットに現れた。
「それはいいわね、ちょうどあなたたちに渡したいものがあるの」
いつも天真爛漫な双葉が何個もの絵文字を送ってきた。
大岩が「お姉さん、一日に三回も結婚準備中のステータスを投稿してるのに、何をくれるか分からないわけないでしょ?」
林知恵はそこで気づいた、双葉が最近結婚するのだと。
新郎は双葉の会社のクライアントで、二人は3年間交際し、最近結婚を決めた。
林知恵も彼女が投稿した多くの結婚準備の写真を見ていた。
以前は何を結婚祝いに贈ろうかと考えていたが、最近忙しくて忘れていた。
双葉は大笑いの絵文字を送った。
「じゃあ決まりね、明日の夜はどう?今日は夫と新居の掃除をしているから、間に合わないと思うわ」
「私は独り身だから、いつでもOKよ」と大岩が返信した。
「私も最近は比較的暇だから、知恵次第ね」と直方来美が返した。
林知恵も水を差したくなかったので、「いいわ」と返した。
……
川合マンション。
林知恵が玄関に入るとすぐに宮本深からのメッセージが届いた。
「今夜は接待があるから、待たなくていい」
「うん」
スマホを置くと、星奈が音を聞いて走ってきた。
「ママ」
林知恵は手を伸ばして彼女を抱き上げた。「今日はいい子にしてた?」