林知恵は前世で、深田紅と折木和秋の共謀によって、多くのデザイン案を失ったことがあった。
だから彼女は今世では特に慎重になっていた。
席を離れるときは必ずパソコンをロックし、廃棄する手書きの原稿でさえ専用の引き出しに入れ、自分の鍵で施錠していた。
しかし、それでも狙われていたとは思いもよらなかった。
林知恵は周囲を見回したが、誰が彼女のパソコンに触れたのか確信が持てなかった。
だから彼女は草を叩いて蛇を驚かせるようなことはしないつもりだった。
午後のティータイム、同僚たちはいつものようにコーヒーに合うお菓子を注文した。
林知恵は進んで階下に出前を取りに行った。
荷物を受け取った後、彼女は別に注文しておいたブラックフォレストケーキを受付の前に置いた。
受付は少し驚いた様子で「これ、私に?」と聞いた。