第500章 霊安室

病院、霊安室。

直方来美の兄が入るなり、ずるそうな目つきで首をすくめた。

先導する医師はマスクをつけ、まるで風を連れて歩くように、冷たい雰囲気を漂わせていた。

霊安室は陰気が強いと言われ、長く滞在すると死の気が身に染みつくという。

直方家の兄は鼻をつまみ、声を上げた。「今日じゃないと駄目なのか?」

医師はかすれた声で答えた。「もう死亡証明書も出したんだ、ここに置いておく理由はないだろう?早く葬式の準備をしろ」

「善行をしたいなら臓器提供もできるが、恨みの強い人の臓器を移植された患者は、自分のものではない記憶を持つことがあるとよく聞くがな」

直方家の兄の表情が凍りついた。

「何を言ってるんだ?お前は医者だろう」

前を行く人物は白衣をひるがえし、振り返りもせずに冷たく笑った。「ここに何度か来れば、すべてわかるさ。科学で説明できないことを迷信と呼ぶのは、人を怖がらせないためだけだ」