林知恵は宮本深と宮本石彦の会話を聞きながら、白川若菜のことを思い出した。
白川若菜には現実とも幻とも区別がつかない感覚があった。
こんな娘を育てられるということは、家族もきっと相当な人物に違いない。
山下穂子がそんな相手に太刀打ちできるはずがない。
林知恵は尋ねた。「白川夫人はなぜ母さんを訪ねてくるの?宮本邸に行けばいいじゃない?」
山下穂子は答えた。「例年なら桑田蘭子が取り持ってくれたけど、彼女が...」
彼女は一瞬言葉を切り、言い直した。「今は宮本邸には当主だけが住んでいるから、女性が訪問するのは少し不便かもしれないわ。」
確かにそうだ。
しかし林知恵はまだ目配せして注意するよう促した。
山下穂子はうなずいた。
朝食を済ませた後、林知恵と宮本深は星奈を送り返さなければならなかったので、長居はしなかった。