チャリティーディナー。
宮本財団のボディーガードの監視のもと、ジュエリーが安全に保管されるのを見て。
林知恵と雪村真理はほっと一息ついた。
雪村真理は林知恵を見て微笑みながら言った。「完成品はとても美しいわ。今日はきっといい値段で落札されるわよ」
「うん」
林知恵と雪村真理は突然話すことがなくなったかのように、気まずく立っていた。
雪村真理は彼女が何を考えているのか理解していた。
「知恵、私はやはり同じことを言うわ。物事は本質を見なければならない。以前手に入らなかったものは、これからも手に入らないわ。だから人として一線を引いておきなさい。将来顔を合わせるときのためにも」
「雪村長、それはどういう意味ですか?」
林知恵は雪村真理の言葉に何か含みがあると感じた。
これは先日、白川若菜が雪村真理のオフィスから笑顔で出てきた様子を思い出させた。
雪村真理は彼女に答えなかった。「行きましょう、パーティーが始まるわ」
そう言って、彼女は立ち去った。
林知恵はその瞬間、雪村真理と白川若菜が何を考えているのか分からなかった。
少し歩いたところで、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「知恵」
林知恵は足を止め、来た人を見て心から微笑んだ。
「桑田社長、お久しぶりです」
「三男様から最近起きたことを聞いたよ。大丈夫か?」桑田剛が尋ねた。
「大丈夫です」林知恵は少し考えてから続けた。「桑田社長、一人の人について尋ねてもいいですか?」
「誰だ?」
「白川若菜です」
彼女は桑田剛がよくヨーロッパに飛んでいることを覚えていた。おそらくそのサークルでは白川若菜についての情報が多少は聞こえてくるだろう。
彼女の前世の記憶は白川若菜という名前と肩書きだけにとどまっていた。
白川家についてはあまり知らなかった。
桑田剛は少し考えてから言った。「白川家は東南アジア一帯でいくらか威信があり、その後ヨーロッパに行って、ビジネスも一気に盛り上がったようだ。しかし我々の間には協力関係はない。ただ白川家の夫婦はいつも控えめで、慈善活動をよくしていると聞いている」
「白川若菜に関しては、彼女はジュエリー業界で能力が際立っている。今回の記念ジュエリーのデザインは獲得できなかったが、それでも名声は広まっている」
彼の言葉は隙がなかった。