第511章 三男様がまた結婚するようだ

声が聞こえて、皆が振り向いた。

林知恵は宮本深の隣に立ち、ゆっくりと歩いてきた。

山下穂子はようやく安堵のため息をついた。

「桑田社長が来られたので挨拶しただけよ。あなたはどこに行っていたの?」

「三男様と仕事の話をしていました」

そう言いながら、林知恵は白川若菜に微笑みかけた。

白川若菜はいつもの冷静さはなかったが、表情にはあまり変化がなかった。

それ以外にも、林知恵は異様な視線を感じた。

彼女が目を上げると、ちょうど杉山静美の瞳と目が合った。

不安になるほど冷たい視線だったが、すぐに消えた。

林知恵がもう一度見ると、杉山静美の顔には優しい笑顔が浮かび、目も穏やかだった。

彼女は林知恵に頷きながら、微笑んで言った。「若菜が見間違えたのでしょう。林さん、本当に申し訳ありません」

この時、周りには状況を知らない多くの来賓が立っていた。

白川家も顔の利く家柄で、白川夫人が自ら謝罪した。

もし林知恵がこだわり続けるなら、白川家の面子を潰すだけでなく、宮本家の面子も潰すことになる。

結局、彼女は今日は仕事の随行者として出席しており、身分は当然、白川家のお嬢様には及ばない。

林知恵は謙虚に頷いた。「白川夫人、そんな大げさに。人違いなだけですから、そんなに深刻に考えなくても。皆さん、どうぞ中へお入りください。晩餐会がもうすぐ始まります」

言い終わると、彼女は横に下がり、白川家の母娘よりもずっと低い姿勢を取った。

ここにいる人々は身分が高貴で、自分の身分を下げることを最も嫌う。

もし林知恵がさっき反論していたら、これらの人々は是非を問わず白川家の母娘を助けただろう。

それなら彼女はむしろ謙虚な方がいい。

どうせ彼女は何も失うものはなく、むしろ良い評判を得られる。

案の定。

以前訪問したことのある夫人が賞賛の目で林知恵を見た。

「奥様、あなたの娘さんは本当に賢くて思いやりがありますね」

彼女はもう少しで白川家の母娘が大げさで、自分の身分を下げていると言うところだった。

山下穂子は自分の娘が褒められるのを聞いて、顔が輝いた。

「そうなんです。うちの知恵は小さい頃から思いやりがあって。さあ、中へご案内しますから、ゆっくりお話しましょう」

「ええ」

一行は散っていった。