声が聞こえて、皆が振り向いた。
林知恵は宮本深の隣に立ち、ゆっくりと歩いてきた。
山下穂子はようやく安堵のため息をついた。
「桑田社長が来られたので挨拶しただけよ。あなたはどこに行っていたの?」
「三男様と仕事の話をしていました」
そう言いながら、林知恵は白川若菜に微笑みかけた。
白川若菜はいつもの冷静さはなかったが、表情にはあまり変化がなかった。
それ以外にも、林知恵は異様な視線を感じた。
彼女が目を上げると、ちょうど杉山静美の瞳と目が合った。
不安になるほど冷たい視線だったが、すぐに消えた。
林知恵がもう一度見ると、杉山静美の顔には優しい笑顔が浮かび、目も穏やかだった。
彼女は林知恵に頷きながら、微笑んで言った。「若菜が見間違えたのでしょう。林さん、本当に申し訳ありません」