現場に駆けつけた時、林知恵と宮本深は警察車両とすれ違った。
彼女は狭山一美の前に急いで歩み寄った。「どうしたの?なぜ警察車が行ってしまったの?」
「私が行かせたんだ」
桑田剛が車の反対側から出てきて、その後ろには山田照夫と田中慎治が続いていた。
林知恵は理解できずに彼らを見つめた。
田中慎治が前に出て説明した。「調べたけど、この道の監視カメラはハッキングされていて、木村悦子が誰かに連れ去られたという証拠がないんだ」
「狭山一美が証明できるわ」林知恵は傍らの狭山一美を指さした。
「彼女はアルコール濃度が基準値を超えていて、警察の質問にも答えられなかった。あと少しで飲酒運転と思われるところだった」田中慎治は無奈に言った。
狭山一美は首を振った。「お酒は飲んだけど、答えられなかったんじゃなくて、怖くて…」
「今そんなことを言っても無駄だ。余計な問題を避けるために、彼女が酔って間違った通報をしたと警察に伝えるしかなかった」
桑田剛は車の後部に立ち、衝突の痕跡を見つめていた。
狭山一美は悔しさで声を詰まらせた。
「私が悪いの!護身術の練習をサボったり、お酒を飲みすぎたり…さっきは全然役に立てなかった。木村悦子は大丈夫かしら?」
宮本深は車を見た。「大丈夫だ。もし木村悦子を殺すつもりなら、ヘッドライトさえ壊さずにはいないだろう。明らかに相手は木村悦子に生きていてほしいんだ」
狭山一美は鼻をすすった。「じゃあ、なぜ木村悦子を捕まえたの?」
その場にいた人々のうち、林知恵と狭山一美を除いて、他の人たちは視線を交わし、非常に沈黙していた。
林知恵は狭山一美を慰めながら、雰囲気がおかしいことに気づいた。
彼女が質問する前に、宮本深が先に口を開いた。
「地面に木村悦子が抵抗した跡がある。何か手がかりを残していないか見てみよう」
狭山一美は力強くうなずいた。「そうよ、車の中から見たとき、彼は男と格闘していた。相手は大勢いたから、彼が無謀なことをするはずがない。きっと手がかりを残すためだったんだわ」
それを聞いて、林知恵は彼女と一緒に頭を下げて探し始めた。
宮本深と桑田剛は車の反対側に歩いていった。
桑田剛は重々しく言った。「まずは小島音芽、次に木村悦子、すべてあなたの予想通りです。相手は座っていられなくなったようですね」