山田照夫は警備員を蹴り飛ばし、田中慎治と共に車を追いかけて少し走った。
突然、二人は同時に立ち止まった。
遠ざかる車を見ながら、山田照夫はズボンを払い、追うのをやめた。
「あのクソ女、結構速く逃げるな。こうなると、後ろ盾を探すしかないだろう」
田中慎治はタバコを一本取り出し、表情は依然として厳しく、宮本深がどうなったのか分からなかった。
彼はタバコを一服吸い、激しく咳き込んだ。
山田照夫は彼からタバコを取り上げて自分で吸い始めた。「怪我が治ってないのに、何を吸ってるんだ?」
田中慎治は眉をしかめ、黙って車を開けに行った。
山田照夫はタバコを捨てて足で踏み消し、追いかけて言った。「まだ怒ってるのか?俺はただ三男様の体調のことを林さんに教えただけじゃないか?」
「今こんな時期に、まだ彼女に一生隠し通すつもりだったのか?」
「今日、お前がいない時、彼女は窓辺に立って俺にたった一言だけ言ったんだ」
「彼女は絶対に三男様を救うと」
「彼女は残ることを決めた時点で、覚悟はできていた。彼女の三男様への感情は確かに複雑だが、弱さではない。恥じるものでもない」
田中慎治は車のドアを開ける手を一瞬止め、顔を上げると山田照夫の視線と合った。
「乗れよ、おしゃべりは多いな」
……
深夜、別荘にて。
林知恵はまったく眠れなかった。
彼女の部屋では点けられる電気はすべて点いていた。
ベッドには大きな京渡市の地図が広げられていた。
自分の目が十分に細かく見えないことを心配して、彼女は宮本石彦の書斎から虫眼鏡を持ってきて、スマホのライトを使って川の流れに沿って一つ一つ探していた。
ベッドサイドのタブレットでは、宮本深が事故に遭った日の風向きや川の流速が報じられていた。
事故当日、大橋の周りにはあれほど多くの人がいたので、宮本曜介が皆の目の前で宮本深を連れ去ることはできなかったはずだ。
しかも宮本曜介自身が皆の目の前で救助されたのだから。
となると、残るのは川の流れに沿って下流へ行くことだけだ。
しかし川には潜流があり、宮本曜介の部下たちはリスクを冒して遠くまで行くことはできないはずだ。
もし宮本深が岸に上がった場所を見つけることができれば、他の手がかりがあるかもしれない。