第550章 あなたが暴走すると思っていた

「宮本深、お前はもう廃人だ。宮本家はいずれ俺のものになる。林知恵のちっぽけな策略など、俺は眼中にない」宮本曜介は拳を握りしめた。

「ふん」

宮本深は無駄口を叩く気もなかった。

宮本曜介の顔は険しく歪み、彼は宮本深のそのような高慢な態度が本当に嫌いだった。

彼は宮本深の襟首を掴んだ。「どっちが強いか見てみようじゃないか。俺の拳か、それとも三男様の口か」

部屋から殴打の音が聞こえた。

しばらくして、アシスタントがタオルを持って入ってきた。

「若様、天田社長がお見えです」

「彼女が何しに来た?」宮本曜介はタオルを受け取り、手の血を拭った。

「彼女は乗馬クラブの最上級VIPの一人です。顧客を連れて提携の話をしに来ました。多くの芸能人も同伴しています。人が多く目も多いですが、お断りしますか?」

「天田社長の知り合いは複雑だから、敵に回せない。どうせ彼女は遊ぶのが好きだから、俺が接待する」

宮本曜介は小声で言い終えると、床に気絶している宮本深を一瞥して立ち去った。

ドアに鍵をかけると、宮本深はゆっくりと目を開け、無表情で起き上がった。

漆黒の瞳は闇と一体化し、危険で静かだった。

血の色が蒼白い顔に散り、美しかった。

彼は唇の端の血を拭い、呟いた。「知恵、お前がやらかすと思っていたよ」

……

林知恵は確かに無茶をしていた。

彼女は小さな芸能人やモデルのスタッフに紛れて乗馬クラブに入った。

これらの小さな芸能人やモデルはみな小島音芽が紹介した人たちで、皆とても気が利く人たちだった。

入るなり、その様子は大物俳優や女優が来たかのような豪華さだった。

しかし彼らの顧客対応は実に手慣れたものだった。

天田社長の顧客を大笑いさせていた。

天田社長はもともと提携を成立させるつもりはなかったが、座って30分で全ての契約書にサインが入った。

彼女がお金を払って呼んだ、売り出し中の気取った大物芸能人たちよりずっと役に立った。

天田社長は群衆の中の林知恵に目配せした。

準備してもいいという合図だった。

林知恵はうなずき、ボディーガードとして現れた山田照夫と田中慎治の方を見た。

彼らが連れてきた人は多くなかったが、みなエリート中のエリートで、天田社長の連れてきた人々の中に紛れていた。