第552章 すべてを焼き尽くす

林知恵が跪くのを見て、渡辺青葉はまるで山下穂子を見ているようだった。

渡辺青葉は誇り高い女性だった。

幼い頃から渡辺家の男たちの中で争ってきたが、彼女は一度も負けたことがなかった。

ただ山下穂子だけには、彼女が欲しかった人を奪われてしまった。

だから林知恵が卑屈になればなるほど、彼女の心は快感で満たされた。

渡辺青葉は高慢に顎を上げた。「あなたのお母さんがあなたのように分別があれば、こんなにあなたを敵視することもなかったでしょうね。1分あげるわ」

「はい」

林知恵は慌てて立ち上がり、不注意でドア枠にぶつかってしまった。

その惨めな様子に渡辺青葉は冷笑しながら銃を下ろした。

林知恵は宮本深の前に駆け寄った。

彼の手首と体の傷を見て、どうしていいかわからず、ただ目が熱くなるのを感じた。

「痛い？」彼女は声を詰まらせた。

「心配してくれるの？」

宮本深は彼女の頬を両手で包み、額にキスをし、次に眉間、鼻先と続けた。

そして止まった。

彼は目を伏せた。「残りは次回、利子をつけて回収する」

そう言って、彼女を抱きしめた。

林知恵も彼を抱きしめ返した。「必ず救うって言ったでしょう。絶対に死なせないわ」

言葉が終わるか終わらないかのうちに。

渡辺青葉はいらだちながら言った。「林知恵、時間よ。行くわよ。あとであなたの遺体を処理する人が来るから」

「安心して、数日後にはまた会えるわ」

林知恵は宮本深から離れ、渡辺青葉に向かって歩き、彼女の前で立ち止まった。

次の瞬間、彼女は恐怖の表情で渡辺青葉の背後を見た。

「葉、葉山姫奈！」

「林知恵、そんな手は私には通用…あっ！」

渡辺青葉の言葉は途中で切れ、腕に大きな切り傷ができ、血が流れ出した。痛みで銃を落としてしまった。

林知恵は銃を足で踏み、後ろに蹴り飛ばすと、すぐに耳を押さえてしゃがみ込んだ。

バン——

弾丸が渡辺青葉の肩を貫通し、彼女は何が起きたのか理解する前に床に倒れた。

渡辺青葉は信じられない様子で林知恵を見た。「あなた、あなた…」

林知恵は手のひらに隠していた薄くて鋭い刃物を見せた。「護身用の刃よ」

それを見て、渡辺青葉は口から血を吐いた。

「ふん…あなたもお母さんと同じく狡猾ね」