任希美の言葉は心に刺さったが、理にかなっていた。
しかし林知恵はどうしてもこの憤りを飲み込むことができなかった。
「この監視カメラの映像を警察に持って行って、再捜査を要求するわ!」
ところが、宮本深が手を伸ばして彼女を止めた。
「白川夫人の話を聞かなかったのか?白川若菜はここ数日、宮本財団に来ていたんだ」
「だからなに?」林知恵は問い返した。
「彼女はフロントでスイーツが用意できることまで知っていた。つまり、休憩エリアの配置にすでに慣れていたということだ。彼女が休憩エリアに何台の監視カメラがあるか知らないはずがないだろう?」
宮本深は監視カメラに映る白川若菜が行ったり来たりする映像を指さした。
林知恵は一瞬固まり、すぐに理解した。
「あの言葉は彼女がわざと監視カメラに録画させたもの。偶然を装った意図的な行動だわ」
「ああ」宮本深は淡々と言った。「君が警察にこの映像を提出すれば、かえって彼女の無実を証明することになる」
聞き終えて、林知恵は白川若菜の対応能力に少し感心した。
しかし、よく考えると、疑問点が多すぎる。
「三男様は専用通路を使って上階に行き、ロビーを通らなかったはず。でも彼女は私たちが階下に降りてきたとき、少しも驚いた様子がなかった。つまり、彼女は三男様がまだ生きていることをすでに知っていたということよ」
井上希美はさらに付け加えた:「彼女はメッセージを見た瞬間から落ち着かなくなった。このメッセージはとても怪しい。誰かが内部情報を漏らしたのかしら?京渡市でそんな力を持つ人物は誰?」
「白川正彦だ」
宮本深はためらうことなくその名前を口にした。
白川若菜の父親。
ここで白川正彦と接点があるのは宮本石彦だけだった。
数年前、長男の宮本世澄が生きていた頃、宮本石彦は彼に同行して白川正彦と何度か会食したことがあった。
「白川正彦は行動が非常に控えめで、海外に行くと言えば誰にも知らせずに出国し、国内の事業もきれいに整理していた」
「今回の提携の話でも、事前に人を派遣して意向を探るようなこともしなかった」
「兄は彼と何度か取引があり、順調だったが、彼の話になると必ず『深く隠している』と言っていた。つまり、腹の内を見せない人物だということだ」
しかし、腹の内を見せないビジネスマンなどいるだろうか?