常盤燿子が有栖川涼に会った時、彼を表現する言葉が思いつかなかった。今、何年も経った今でも、彼を形容する言葉を見つけることができない。
もし常盤燿子が必死に考えて言葉を選ぶとしたら、二文字しか出てこない:誘惑。
整った眉、高い鼻、薄い唇、流れるような輪郭の線。
有栖川涼のこの顔は、どう見ても人を罪に誘うものだった。
常盤燿子はお酒を飲んでいなかったが、有栖川涼を見つめているうちに、少し酔ったような気分になってきた。
部屋にはアルコールの匂いがあったため、窓を開けたばかりだった。
強い風が吹き、中庭の木々の葉がサラサラと音を立てていた。
風が部屋に入り込み、彼女の長い髪と彼の短い髪をゆっくりと揺らした。
この瞬間、常盤燿子はなぜか突然、時間が逆流しているような錯覚を覚えた。