第32章 彼と彼女の過去の時間(2)

上杉琴乃は有栖川涼の話題についてあまり触れず、常盤燿子の疑問を解消した後、本題を思い出した。「今夜、予定ある?柊木誠一がみんなを食事に誘ってるんだけど」

「いいわよ」常盤燿子はゆっくりと答えながら、目の端で有栖川涼がいる方向をちらりと見た。柊木誠一の食事会なら、彼も来るはずよね。

実際には、結局常盤燿子は失望することになった。スケートリンクが閉まる前に、有栖川涼は先に帰ってしまったのだ。

有栖川涼のせいで、その後は上杉琴乃が常盤燿子を遊びに誘うたびに、燿子は必ず承諾するようになった。

毎回有栖川涼に会えるわけではなかったが、ほとんどの場合、彼はそこにいた。

彼らと接する機会が増えるにつれ、常盤燿子は次第に気づいた。有栖川涼の友人たちは、時々彼と冗談を言い合うこともあるが、みんな彼に対して実は非常に慎重だった。ずっと後になって彼女が知ったのは、彼がいつも持ち歩いているタバコやお酒は特別なもので、市場では全く手に入らないものだということだった。