第57章 できるだけ遠くに消えろ(7)

「それから、私の記憶が正しければ、沙羅ちゃんが去る前に、あなたに言ったはずよ。あなたは有栖川様のところだけをしっかり面倒見ればいいのよ。有栖川涼のことには、関わらない方がいいわ」

ここまで聞いて、常盤燿子は理解した。

高橋静香が今日病院に来て、有栖川涼を見たのだ。彼女は燿子と涼が何か関係を持つことで、和泉沙羅の有栖川奥さんの地位に影響が出ることを恐れているのだ。

「誤解されていますよ。今日は有栖川様のお誕生日で、私と有栖川さんがお祝いに行く途中で事故があって、私が彼を救ったんです」常盤燿子は要点だけを話した。

高橋静香は頷きながら「ああ」と言い、しばらくして常盤燿子に向かって優しい笑みを浮かべた。「別に他意はないのよ。ただ注意を促しただけ。私たちの約束を忘れないでね。それに、あなたの家の高利貸しのこともね。毎月、私と沙羅ちゃんからお金をもらって返済しているでしょう」