有栖川涼はグラスにお酒をたっぷり注いでから、ようやく手を止めた。彼はボトルを無造作に脇のテーブルに置くと、顔を上げて目の前の菅野千恵を見つめた。「本当に彼女に謝らせたいのか?」
菅野千恵は学校で横暴に振る舞う兄を後ろ盾にしていつも通り、有栖川涼の質問に対して小さな顎をちょっと上げて「うん」と一言答えた。常盤燿子に絶対に謝らせるという態度だった。
有栖川涼は軽く頷くと、次の瞬間、常盤燿子の方を向いて口を開いた。タバコを咥えていたため、言葉は少しもごもごしていたが、部屋中の人々には十分聞き取れた。「じゃあ、彼女に謝りに行け」
有栖川涼の言葉に、上杉琴乃は先ほどの呆然とした状態から我に返った。「どうして燿子ちゃんが謝らなきゃいけないの?悪いのは燿子ちゃんじゃないのに...」