常盤燿子は自分が封筒を持ったままどれだけ呆然としていたのか分からなかった。我に返った時には、窓の外はすでに真っ暗になっていた。
彼女は封筒を適当に化粧台の引き出しに放り込み、階下へ降りた。
常盤燿子がダイニングルームに入った時、有栖川涼がまだ食卓に座って夕食を食べていることに驚いた。彼は物音に気づいて目を上げ、彼女に一瞥をくれたが、表情は少しも変わらず、まるで彼女がそこにいないかのように、すぐに頭を下げ、片手で茶碗を持ってスープを飲みながら、もう片方の手でスマホの画面をスライドさせてニュースを見続けた。
「お嬢様、何をお召し上がりになりますか?」執事は有栖川涼の向かいの椅子を引き、「有栖川さんと同じく麺にしますか、それともご飯にしますか?」
有栖川涼の別荘に住み始めて3ヶ月の間、最初に有栖川家の旧邸で一緒に食事をした一度を除いて、常盤燿子と有栖川涼は同じ食卓を囲んだことがなかった。彼女は一瞬足を止めてから、食卓の椅子に座り、執事に小さな声で答えた。「ご飯をお願いします」