第72章 深い愛と浅い縁(2)

有栖川様の言葉に、常盤燿子はまるで電気ショックを受けたかのように全身が震え、考えることなく口を開いた。「もう1時近くですから、彼はすでに昼食を済ませているでしょう。」

「いや、涼の会社での生活習慣は私が知っている。どんなに早くても1時過ぎにならないと食事に行かない。今から行けば十分間に合うよ。」有栖川様は自信たっぷりに常盤燿子に保証すると、キッチンの方を向いて勝手に決めてしまった。「中村くん、後で食事を弁当箱に詰めてくれ。沙羅ちゃんが会社に行くから。」

「おじいさま……」常盤燿子はまだ何か言って、有栖川様の弁当を届けるという考えを打ち消そうとしたが、彼女が二言目を発した時、有栖川様は不思議そうに彼女を見て、少し意外そうに言った。「おや、以前はあなたは何かと言っては私のところに来て、わざわざ中村くんに食事を準備させて、それを持って会社の涼を訪ねていたじゃないか。今日はどうしたんだい?」