第107章 目が本当に人を惹きつける(7)

しかし彼は必死に記憶の中をすべて探しても、あの声に関する手がかりは何も見つけられなかった。

彼は、幻聴だったのか、あるいはその時街の風が強すぎて聞き間違えたのかもしれないと思った。

あの「有栖川涼」という一声が彼をどれほど動揺させたとしても、彼はその日が過ぎれば、以前のような自由奔放な有栖川涼に戻れると思っていた。

しかし、彼が実際に彼女の回避と距離を目にしたとき、彼の心の中のもやもやは消えるどころか、ますます増していった。

さらに彼は、今でも理解できない多くの行動をとっていた。

例えば、昨晩自ら家に帰ったこと、今日雨の中彼女を迎えに行ったこと、そして...彼が大和くんに彼女のためにお粥を買いに行かせたこと。

長い間考え込んでいた有栖川涼は、さまよう思考を引き戻し、振り向いて、彼が蹴飛ばして床に散らばったお粥を見た。