彼の家には和泉沙羅が住んでいるじゃないか。彼の別荘について話すということは、間接的に和泉沙羅のことを持ち出すことになる。今、彼は和泉沙羅と気まずい関係なのに、自分から罵られに行くようなものじゃないか?
陸田透真は軽く咳払いをして、先ほどの話をごまかそうとしたが、有栖川涼が冷ややかに言った。「じゃあ、俺の家でいいだろう」
陸田透真は有栖川涼を見つめ、一瞬呆然とした。
しばらくして、有栖川涼は彼からの返事がないので、ようやくゆっくりと顔を向け、ちらりと彼を見た。
陸田透真はすぐに我に返り、激しく頷きながら言った。「いいよ!」
そして携帯を取り出し、柊木誠一にメッセージを返しながら、心の中で不安になった。涼さんは本当に読めないな。さっきまで和泉沙羅を見たくないと追い出したのに、どうして急に自分から家に行こうとするんだろう?