大和くんは思わず冷や汗をかいた。まずいぞ、和泉さんはまた叱られるのではないか……彼の考えがまとまらないうちに、彼は目を疑うような光景を目にした。
有栖川涼は視線を戻し、手を上げて口からタバコを取り出し、手で消して、隣の灰皿に捨てた。
大和くんは信じられない表情で、今見たばかりの光景を頭の中でしばらく消化してから、こっそりと隣の有栖川涼を見た。
男は頭を傾げ、窓の外を見つめて何かを考えているようだった。彼の表情は明らかに機嫌が悪いことを示していたが、タバコは手元にあるのに、彼はそれ以上吸おうとはしなかった。
有栖川さんが……和泉さんの二度の咳のためにタバコを消したなんて?
これは彼が有栖川さんの運転手になってから、初めて見る光景ではないだろうか?有栖川さんが他人のためにタバコを消すなんて?