第166章 そのまま読み上げる（6）

執事は有栖川涼の機嫌があまり良くないことを見て取り、彼に従っておけば問題ないと分かっていたので、彼の指示を聞くとすぐに「はい」と返事をして、一目散に階段を駆け上がった。

執事はドアを何度かノックしたが、返事がなかったので、ドアを開けて部屋の中を静かに覗いてみた。常盤燿子はドアに背を向けてベッドで熟睡していた。執事は小声で「お嬢様」と二度呼びかけたが、常盤燿子が全く反応しなかったので、静かにドアを閉めて階下に戻った。

その時、有栖川涼は優雅な姿勢でソファに座り、新聞を手に取り、足を組んで読んでいた。彼は執事が階下に降りてくる気配を聞いて、顔を傾けて彼女の方を見た。

執事は有栖川涼から遠く離れて立ち、正直に答えた。「お嬢様はお休みになっています。何度お呼びしても、起きませんでした。」