第165章 そのまま読み上げる(5)

彼女は言った、陸田透真に会いに行ったのに、なぜ彼は怒るのか?実は……彼は彼女が自分の顔を潰したと思っていたのだ!

幸い、あの時の彼女は、彼が嫉妬しているのだと勘違いすることはなかった……

常盤燿子は心の中で軽く自嘲し、有栖川涼の言葉を聞かなかったかのように、ゆっくりと体を起こし、シーツを引き寄せて体に巻きつけ、バスルームに入った。

しばらくすると、バスルームから水の音が聞こえてきた。ドレッシングルームで西洋ズボンだけを身につけ、服を探していた有栖川涼は、無意識にバスルームのドアを振り返って見た。しばらく水の音を聞いてから、手近な服を一揃い取り、主寝室を出た。

有栖川涼は客室の洗面所でシャワーを浴び、きれいな服に着替えて出てきたとき、ちょうど向かいは主寝室だった。彼はドアを開けて中の女性が何をしているか見たいと思ったが、ドアの前まで来ると、手を引っ込め、書斎に向かった。机の引き出しからタバコを一箱取り出し、一本を口にくわえ、火をつけながらオフィスチェアに座った。