第187章 あの日、ありがとう（7）

「医者を呼べと言ったか？いつから、お前がこの家の決定権を持つようになった……」

有栖川涼が執事に向かって容赦なく叱りつけていると、突然閉まっていた主寝室のドアが内側から開かれた。

彼の言葉は突然途切れ、ドアの方を振り向いた。

常盤燿子は昨夜家を出た時と同じパジャマ姿で、素足のまま、ドアノブを握り、入口に立っていた。

彼の視線が向けられると、彼女は本能的に半歩後ずさりし、彼女が開け放っていたドアを少し閉めてから、口を開いた。「羽田医師は、私が執事に呼ぶように頼んだんです。」

彼女が呼んだ？

有栖川涼は常盤燿子に向かって、強く眉をひそめた。

彼の顔にはまだ先ほど執事を怒鳴った時の怒りが残っており、眉をひそめると表情はさらに沈んで見えた。常盤燿子は無意識に彼の怒りが執事から自分に向けられると思い、急いでドアをさらに閉め、小さな顔だけを外に出し、唾を一度飲み込んでから、また小さな声で言った。「薬を塗っても、感染する可能性があるから、やはり羽田医師に診てもらった方がいいと思って……」