第188章 あの日、ありがとう(8)

執事は有栖川涼の世話を何年もしてきて、彼の短気で気まぐれな性格にはすっかり慣れていた。また、彼が非常に気難しい性格であることも知っていたが、こんな様子は見たことがなかった。彼女は、このあと有栖川涼がまた何か奇妙なことをして人を困らせるのではないかと恐れ、どうせ羽田医師がここにいるので自分は必要ないだろうと、適当な言い訳をして逃げ出した。

……

昨夜から今まで騒ぎ続け、有栖川涼も常盤燿子も執事も、誰も休んでいなかった。ようやく落ち着いたとき、みんな少し疲れ果てていた。

有栖川涼は客室で、常盤燿子は主寝室で、執事は階下で、それぞれ仮眠をとった。

常盤燿子は寝る前に熱いシャワーを浴び、有栖川涼が家にいるため、特に化粧をしてから眠りについた。

彼女が目を覚ますと、窓の外はすでに暗くなっていた。