血に染まったシャツは、有栖川涼によって脱がされ、玄関の床に無造作に投げ捨てられていた。
テーブルの上には湯気の立つ洗面器が置かれ、彼は上半身裸で、ソファの横に立ち、身をかがめてタオルを洗っていた。
常盤燿子は有栖川涼が彼女に気づいていないのを見て、主寝室のドアの前で静かに立ち、客室にいる彼を見つめ始めた。
彼はタオルを絞ると、鏡に向かって体についた血を拭き始めた。
彼は背中が見えず、片方の肩にも怪我をしていたため動きが不自由で、雑に拭いていた。
おそらく自分が十分にきれいに拭けていないことを知っていたのだろう、苦労してタオルを背中に回し、適当に二回ほど拭くと、諦めてタオルを洗面器に投げ入れ、ソファに座って、テーブルの上の薬瓶を取り、肩甲骨の傷に薬を塗り始めた。
彼が振り向いて見える場所には、何とか正確に薬を振りかけることができたが、見えない場所は、鏡を使って傷の位置を把握しようとしても、薬の粉は何度も体やソファの上に散らばってしまった。