第183章 あの日、ありがとう(3)

「どうしたんですか?なぜこんなに血が?」執事はすぐに常盤燿子のことを気にかける余裕がなくなり、車の前部を回って運転席のドアの側に行った。「何事もなかったのに、外出して戻ってきただけでこんな重傷を?こんな深い傷は、感染しやすいですよ...有栖川さん、医者を呼びましたか?」

執事は矢継ぎ早に多くのことを言い、最後の質問をした後、やっと我に返り、急いでポケットから携帯電話を取り出した。「すぐに羽田医師に電話して、急いで来てもらいます...」

執事は電話をかけながら、車のドアから離れた。「有栖川さん、まず車から降りて、家に入りましょう。応急処置をして、出血を止めます...」

有栖川涼は執事に放置された常盤燿子を一瞥し、眉をひどく顰め、自分に対して延々と話し続ける執事に不機嫌に言った。「なぜ私の周りをうろうろしているんだ?私に何があるというんだ?彼女をちゃんと見ていればいいんだ!」