車に乗ってから目を閉じて黙っていた有栖川涼は、この言葉を聞いて、わずかに瞼を持ち上げ、とても小さな声で「うん」と返事をした。
車内は再び奇妙な静寂に包まれた。陸田透真はハンドルを操作しながら前方をまっすぐ見て運転していたが、時折、目の端で隣の有栖川涼を見ると、彼が噴水から拾い上げたネックレスを絶えず指で撫でているのが見えた。
……
陸田透真はホテルのフロントに声をかけ、二人分の服を持ってきてもらった。自分のサイズの服を取り、スイートルームのリビングのバスルームへ向かった。
一晩ろくに休めなかったため、陸田透真は熱いお風呂に浸かり、時間がかかった。出てきてからタオルで髪を拭きながら、スイートルームの寝室のドアをノックした。「涼さん?」
返事はなく、静寂だけが彼を迎えた。