第248章 後宮で寵愛を争う妃(8)

彼女は夜に颯太が贈り物をした時の、わざと見せた神秘的な雰囲気と、抑えきれない興奮、そして彼女がネックレスを身につけた後、彼女が気に入ったと言うと、彼の目に隠しきれなかった喜びを忘れられなかった。

もし彼が知ったら、彼が贈ったネックレスが、彼女の身につけられてわずか数時間で失くしてしまったことを、きっとがっかりするだろう……

常盤燿子は考えれば考えるほど、目に霞がかかってきた。噴水の底は泥だらけで、彼女は何度も手を入れて探した。ボトルキャップ、箸、ビニール袋……様々なゴミが彼女の手に触れたが、あのネックレスだけは見つからなかった。

……

有栖川涼はその場に凍りついたように立ち、まるで彫像のように動かず、先ほど常盤燿子のネックレスを引きちぎった自分の手を見つめていた。