常盤燿子は眉をひそめ、寝室に入ると、ガラス越しに、あの姿を信じられないような思いで見上げた。
さっき一瞬見た影は、間違いではなかった。本当に彼だった……午後に家に戻り、また出て行った有栖川涼だった。
彼が戻ってきたのに、なぜ家に入らないのだろう?道端に立って何をしているのだろう?
寝室の電気がついていなかったため、常盤燿子のいる場所は真っ暗で、有栖川涼に気づかれる心配はなかった。だから大胆に彼の様子を観察し始めた。
彼は雨が降っていることを感じていないかのように、街灯の下に立ち、静かにタバコを吸っていた。
車はエンジンをかけたまま、ハザードランプを点滅させて彼の前の道路に停まっていた。
彼は何かを迷っているようで、何度も別荘の門の方を見ていた。何度か常盤燿子は彼が入ってくると思ったが、結局彼はその場に立ったままだった。