彼は今まで女の子をなだめたことがなく、どうやってなだめたらいいのかもわからなかった。普段は口が達者なのに、彼女に会った瞬間、喉が誰かに掴まれたように、何も言葉が出てこなくなった。
だから考えた末、やはりやめておこうと思い、執事に彼女に渡してもらうことにした。彼が彼女の部屋に上がって、彼女を慰めるどころか、余計に悲しませるようなことを言ってしまうかもしれないから。
彼女が箱の中身を見て、少しでも気分が良くなることを願っている……
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常盤燿子が階段を降りてきたのは、夕食の時間だった。
有栖川涼は滅多に家にいないので、燿子も広々としたダイニングで一人で食事をすることに慣れていた。特に不快に感じることもなく、食事を終えると、彼女は執事に一言挨拶をして、階段を上がろうとした。