第289章 あの手この手の探り（9）

常盤燿子はベッドの頭に寄りかかり、平然とした表情で携帯を見つめていた。まるで有栖川涼がそこに存在していないかのように。

彼女のすぐそばまで来ているのに、彼女はまだ反応していない？

有栖川涼は目を動かしながら、一方で水の入ったコップに触れ、わざと体を傾けて常盤燿子の方へ少し近づいた。

常盤燿子は有栖川涼が近づいてきたことに気づいていないかのように、眉一つ動かさず、有栖川涼が近づいてきた時でさえ、指先で軽くスクリーンをスライドさせていた。

彼女の体にほとんど寄りかかっているのに、彼女はまだこんなに無関心なままなのか？もしかして携帯に注意を引かれているのだろうか？

そう思った有栖川涼は、常盤燿子の携帯画面に顔を近づけて尋ねた。「何を見ているの？」

常盤燿子は携帯画面から視線を少しも外さず、感情のない調子で答えた。「小説を読んでいるの」