第288章 あの手この手の探り(8)

有栖川涼は秘書がオフィスを出るのを待ってから、机の上の固定電話を取り、家に電話をかけた。

電話に出たのは執事で、有栖川涼は簡潔に自分の予定を伝えた。「今夜は少し用事があって、帰りが遅くなるかもしれない……うん、夕食は待たなくていい、常盤さんにそう伝えておいてくれ」

電話を切ると、有栖川涼は机の上の香水をしばらく見つめ、それからゆっくりと椅子から立ち上がり、それらの香水ボトルを手に取って、一つずつ蓋を開け、匂いを嗅ぎ始めた。

有栖川涼は特に香りの強い香水を選んでいた。彼は一人で机の上の香水と格闘すること丸々30分、30本近くの香水を選び出した後、手首を上げて時間を確認した。まだ夜8時にもなっておらず、家に帰るにはまだ早すぎるようだった……

少し間を置いて、有栖川涼はついに机の上の書類を手に取り、読み始めた。