第285章 あの手この手で探る(5)

有栖川涼は元々手紙の紙に「Sくん」と書こうとした動作が、ふと止まった。

Aちゃんも女の子だし、女の子は女の子のことをよく理解しているだろう?

思いつくと、有栖川涼はすぐに手紙の紙に素早く一文を書き加えた。「Aちゃん、もし女性がどうしても男性のお金を使いたがらないとしたら、それはなぜだと思う?」

「Sくん」と署名し、有栖川涼は手紙をゆっくりと折りたたみ、引き出しから封筒を取り出して中に入れ、神奈川市立高校の住所を書き、切手を貼り、書類フォルダに挟んで、明日会社に行ったら大和くんに出してもらおうと準備した。

……

主寝室は静かで、常盤燿子は空いている大きなベッドの半分に背を向けて、深く眠っていた。

有栖川涼は静かに布団をめくって横になった。Aちゃんに返事を書いたせいか、彼女が自分のお金を使わない理由を考えていたせいか、あまり眠気がなかった。