大和くんは「はい」と返事をして、車を発進させて別荘の方向へ向かった。
有栖川涼はもう何も言わず、車の背もたれに寄りかかり、窓の外を流れていく夜景を見つめながら、目が少し遠くを見るようになった。
帰る?ほんの数日のことなのに……毎晩仕事を終えると、「帰る」という言葉が彼の中で根深い習慣になっていた。
涼は大和くんを敷地内に入れず、彼の車が去った後で、暗証番号を入力して中に入った。
彼は軒下で長い間立ち尽くしてから、やっと手を伸ばして暗証番号を入力した。
別荘の中は電気が一つも点いておらず、真っ暗だった。彼は手を上げて、壁をしばらく探り、ようやく玄関の壁灯をつけた。靴を脱ぐと、そのまま二階へ向かった。
二階は一階よりも静かで、彼の足音に合わせて、音声感知式のライトが一つずつ前方で点灯し、後方では消えていった。