会議が終わると、もう午後1時になっていた。有栖川涼は常盤燿子が心配で、オフィスに戻るとすぐに家に電話をかけた。
電話に出たのは執事だった。「有栖川さん?」
涼は執事の挨拶を無視して、本題に入った。「奥様はお元気ですか?」
「奥様はお元気です」
「まだ吐いていませんか?」
「いいえ、ご指示通り、お昼にオートミールのお粥を作りました。奥様の食欲は悪くなく、小さな茶碗に二杯も召し上がりましたよ」執事の言葉には少し自慢げな調子が混じっていた。
涼はほっと息をついた。どうやら大したことはないようだ。しかし、まだ少し心配で、考えた後にこう言った。「奥様をよく見ていてください。何か問題があれば、すぐに報告してください」
言い終わって、涼は問題が発見された時には既に深刻になっているかもしれないと思い、言い直した。「いや、今すぐ夏目医師に電話して、来てもらいましょう。奥様の全身検査をしてもらえば安心できます」