「有栖川……」大和くんは有栖川涼が自分の前を通り過ぎようとした時、口を開き、もう一度有栖川涼に注意しようとしたが、一言発しただけで、有栖川涼の冷たい視線が彼に向けられ、彼は恐怖で即座に口を閉じ、振り返って壁に向かい、じっと動かずに立っていた。
有栖川涼はベッドの端に座り、ぬるま湯を常盤燿子に渡した。「少し飲んで、胃が楽になるよ」
「ありがとう」常盤燿子はそれを受け取り、半分ほど飲んだ。そして有栖川涼がベッドの端に座ったまま、まだ去る気配がないのを見て、先ほどの大和くんの催促を思い出し、コップを持ちながら言った。「大丈夫だよ、すぐに良くなるから。あなた、これから会議があるんでしょう?早く行ってよ」
有栖川涼は「うん」と返事をしたが、常盤燿子から目を離さず、まだ立ち上がる気配はなかった。