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有栖川涼と陸田透真の二人が前後して一緒にエレベーターに乗り込むのを待ってから、高橋静香はようやく柱の陰から出てきた。
高橋静香は高架橋で、偶然有栖川涼の車を見かけたのだった。
彼は彼女の左側の車線の後方にいて、バックミラーを通して、彼女は運転席にいる彼の姿をはっきりと見ることができた。
道中、彼は誰かと会話しているようで、時々携帯電話を見て、道路が渋滞して動かないときには、携帯を持ち上げて画面を二度タップしていた。
誰と何を話していたのかはわからないが、文字を打つ前に、彼は時々優しい目つきで画面を見つめ、柔らかな笑みを浮かべていた。
その笑顔は、目の奥まで届き、少し甘やかすような、また心が躍るような喜びを含んでいて、普段の冷たく高貴な雰囲気とは違い、彼女が有栖川涼を知って以来、沙羅ちゃんと一緒に彼を見てきた中で、一度も見たことのない表情だった。