彼は専門的な宝飾デザインの出身ではないが、描いたスケッチは専門家の図面に劣らないものだった。
陸田透真がテーブルの上の図面を見つめていると、有栖川涼の指先から赤い宝石箱が彼の視界に滑り込んできた。そして、有栖川涼の低く穏やかな声が陸田透真の耳元で響いた。「これは君が来る前に選んでおいたダイヤモンドだ。指輪のサイズについては、今夜メッセージで知らせる」
陸田透真は我に返り、宝石箱を開けると、中には鳩の卵ほどの大きさのピンクダイヤモンドが入っていた。店内の照明に照らされ、眩いばかりの光を放っていた。
陸田透真はしばらく見つめた後、箱を閉じ、顔を上げて向かいの有栖川涼を見た。わかっていながらも尋ねた。「沙羅ちゃんにプロポーズするつもりなのか?」
「ああ」有栖川涼は率直に頷き、さらに言った。「でも、しばらくは秘密にしておいてほしい」